小説家になる方法

“最凶の漫画家”木多康昭に学ぶ「おもしろい漫画を書くために本当に必要なもの」とは!?

2015/11/23

「最凶」と呼ばれ、恐れられている漫画家がいる。週刊ヤングマガジンにて『喧嘩稼業』を連載している木多康昭先生だ。『喧嘩商売』から2年半の休載を経て、装い新たに連載を再開した。

 

『喧嘩稼業』は、「オラトーナメントさ出てぇ」と最強の格闘家を決めるトーナメントへの出場権を狙う主人公:佐藤十兵衛が、得意の権謀術数をめぐらし「東洋のフランケンシュタイン」ことヘビー級プロボクサー:石橋強へと「喧嘩」を仕掛けるという内容だ。
闘いの模様はヤングマガジン誌上にて(今のところ)ほとんど休載なく掲載されている。

 

本人すらネタにする「休載漫画家」である木多康昭先生。2013年12月連載再開ということもあり、最近名前を目にしたことのある方も多いのではないだろうか。クリエイター志望の方にとって第一弾の記事に木多先生というのは意外に思われるかもしれない。しかし「クリエイターとしてまだ芽の出ていない人ほど木多作品は参考になる」と筆者は確信している。読んで頂ければすぐにお分かりになるはずだ。

 

さて、『喧嘩商売』は「最強の格闘技は何か」を決める格闘漫画だが、パロディと下ネタを中心としたギャグも人気の一因だ。その作風は、30代の読者であれば「『幕張』の木多先生ですよ」と言えばわかる方も多いのではないだろうか(そう、「奈良づくし」のアレである)。
引くほどえげつない下ネタ、パロディネタが主な武器。ジョジョネタなどのパロディの走りでもある。芸能人、担当編集者、同誌で連載している漫画家のプライベートをネタにするなどと、自由すぎる作風は当時から異彩を放つ。放ちすぎてしまったことが原因かは不明だが、次の『泣くようぐいす』以降は集英社から講談社へと移籍をしての連載だ。

 

あるときには他人から恨みを買う芸風。またあるときには『泣くようぐいす』『代表人』などの打ち切り。そして『喧嘩商売』で確率した休載漫画家というキャラ付け――『代表人』当時は休載の多い富樫先生を散々ネタにしていたにもかかわらずだ――などから、ファンからは「最凶の漫画家」と恐れられている(このことは自身も巻末ページでネタにしている)。

『幕張』という野球漫画を一読して頂ければその破天荒ぶりの一端を垣間見ることができる。野球漫画のはずなのだが、読み進めていくうちに「コイツら野球しろよ!」と思わず斜め上の衝撃を受けるだろう。
しかしこの『幕張』だが、絵や構図の技量など、「漫“画”としてはどうなのか?」と言われたら首をかしげることになる。登場キャラは似たような顔が多い、輪郭や体の線が歪んでいることもしばしば。画力勝負では最近のアマチュア漫画家相手に歯が立たないだろう。
それでも『幕張』は「ジャンプ」で9巻にわたって連載されて、今でも多くの読者の記憶に残っている。
それは何故なのかと考えていけば、「読んでいて面白いという強い印象が、作画の技量不足を上回る」という一点に尽きるだろう。万人受けはしない作風だが、一部の読者から熱狂的な支持を得たのは、気鋭のギャグセンスが人々を惹きつけるからだ。

 

2006年6月22日に早稲田大学で行われた「木多康昭トークライブ」で木多先生が漫画家を目指したきっかけを話している。

漫画家を志した時は、漫画はまだ描いたことはなかった。GAGキングの第二回大賞作品を読んで「これなら描ける」と思い描き始めた

「それはギャグマンガだからできることだ」と思われる方もいるかもしれない。(筆者にギャグ漫画を蔑視する意図はないが、)確かにそういう側面はあると思う。絵が下手なことも、ギャグ漫画だったらネタの一部になってしまう。増田こうすけ先生の『ギャグマンガ日和』などは、そうした「あえての絵のヘタさ」を利用した笑いの好例だ。

 

では画力の低い人間は、ギャグ漫画以外を描けないのだろうか。感動のシーンでヒロインの等身がおかしなことになっていたら、それこそギャグ漫画にされてしまう(悲しいことに有名少年誌でそんな事態になった結果ネットでネタにされ、ついにはギャグにされてしまった漫画を私たちはいくつか知っている)。クリエイターとしてはそんな事態は避けたいハズだ。

 

『喧嘩商売』はこれまでの木多作品とは異なり、ギャグの一方での迫力ある格闘描写、トーナメント出場者の人間関係の描写など、シリアス面の好評が人気の主軸だ。「ギャグなんか抜いていいから本筋を進めろ」などという、往年の木多ファンからは考えられない意見も見られるほどだ。

 

木多先生のマンガを描く力は作品を追うごとに向上している。二作目の『泣くようぐいす』では終盤に「本気で野球を始める野球部員」たちを数話にわたって描いているが、これが「ギャグ抜きで面白い」と言わせる出来栄えになっている(それでも『幕張』のせいもあるのか、ところどころに「ギャグ漫画」を感じてしまうのは否めないのだが)。

 

木多先生は『喧嘩商売』を描く上で自身の画力に関して、現代ならではの克服をしている。3Dモデリング、CGで作ったキャラを参考にマンガを描いているのだ。表紙も後期のものだと、3Dキャラを加工したものがメインになっている。背景も実際の写真を加工している場合も多い。最大のメリットは「スピードが上がる」点だという。そのまま3Dを載せるばかりではなく、「参考に、書くスピードを上げる為に」使用した結果、週刊連載の上で重要な「丁寧にキャラをかく時間」の確保につながった。そのおかげで画力が向上したと、上記「木多先生インタビューまとめ」で話している。

 

今や「ある程度」絵がかけたら、あとはどれだけ面白いマンガを書けるか、という時代になっているのではないだろうか。「画力は後からついてくる」というのも、木多先生に見習うべき前例だと考えることができる。
「自分の画力で読者を引き込むマンガを描きたい」という人も多いかもしれない。それでも「第一歩としてまず漫画家として経験を積みたい」という人、「画力を上げるよりも先にとにかく面白いマンガが書きたい」という人は、木多先生のような漫画の書き方や手法を参考にしてみてはいかがだろうか。
もちろん惹きつけるギャグセンスなど、画力以外の武器は別で求められるが、それは熟練したどんな漫画家でも同じことなのだ。

-小説家になる方法
-, , ,